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時代の文化に敏感だった父は事業を営んでいた事もありテレビが流行ればテレビを買い、気に入った車が出れば早速契約するといった趣味を優先する楽天的な親だった。その流れの一部で購入したのであろう当時としては珍しいステレオセットが自分が小学校にあがった頃には自宅にあった。それは「コロムビアFMステレオDSC-726」という観音開き式

ドアのついた家具調システムだった。中学卒業まで家にあったがすでに時代はシステムコンポに移行しており粗大ゴミ

で処分された。今思い出せば当時の幼い自分にはステレオやらモノラルだのの知識もなく、小学校高学年になり聴き始めたビートルズの曲で音が左と右で違う事に初めて気づき、それをきっかけに音響に興味を持ったものだった。

確か当時のセットには蒸気機関車が右から左に移動する音を収録したサンプルレコードが付属していたそうだが、何せ子どもだったのでそんなものを確かめる気すらなかったのだろう。

​昭和40年以降のステレオセットはスピーカーと操作部が分かれた3点家具調ステレオが主流になる。綺麗な木目の豪華なイメージは音楽を聴くことが贅沢な時間だと思わせてくれたものだった。

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その後、1970年代に入りコンポーネントステレオブームが到来。各家電メーカーがこぞってオーディオブランドを立ち上げて競合し合う時代になる。当時はダントツにトップを直走っていた「ナショナル」すなわち「松下電器」がテクニクスというオーディオ部門を設立、続いて三菱はダイヤトーン、・・・・(下記別表参照)といった具合に独自ブランドが乱立する。マニアの間ではプリメインアンプはサンスイ、テープデッキは赤井、スピーカーならヤマハかダイヤトーンといった具合にメーカーを超えた好みのシステムを構成できるという楽しさが人気の源になる。そんな中で「サントリパイ」と呼ばれる三大オーディオ専門メーカーの力が一つ抜き出た存在だった。山水、トリオ、パイオニアはマニアックなオーディオファン向けに今で言うハイエンドモデルを次々に発表。オープンリールテープデッキを組み込んだフルシステムなどは見て羨ましがるしかなかったのを覚えている。もちろん庶民には高嶺の花の存在だが、そんな高級メーカーが家電グループのマーケットに参入するため廉価なモデルを発売開始する。我々音楽好きにとってはたまらなく楽しい時代だった。オーディオ専門メーカーに対抗しようと家電グループは切磋琢磨、ウォークマンを生み出したソニーがダブルカセットデッキを発売するなど知恵を絞った商品開発が進んでいった。

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そして現代、このカテゴリーの別ページにもある様に音響の世界は映像の世界と組み合わさりオーディオ&ビジュアルという新たな分野を産み出した。そこにもある通り日進月歩の音響再生テクノロジーの進歩によりステレオから360°のイマーシヴ音響に進化し続けている。これも近代のデジタルテクノロジーがもたらした恩恵ではあるのだが、昭和人間の自分にとってはやっぱり音響のルーツはアナログのステレオなのである。

今から10年以上前になるが、前述の子供の頃のステレオセットをオークションで見つけた。一も二もなく入札、競合者も無く落札して同じものを再び手に入れた。ただ、出品側が大阪の方で商品の電気的仕様が関西用の60ヘルツだった。

電圧は関東と関西では21世紀の今も分かれていて特に回転もののスピードは致命的に相反する状況が続いている。

せっかく手に入れたステレオセットなのでモータープーリーという部品のサイズやターンテーブルの速度調整を色々と試して、何とかレコードを再生することが出来た。そこで改めて聴いたアナログレコードの音に、デジタルには決して到達できない臨場感とエネルギーを確認できた。スピーカーはバスレフタイプの当時のものなのだがそれまでのどんな優秀なスピーカーでも再生できない温かみがあるのには今更ながら驚かされた。

​あらゆる物には「創成期」というタイミングがあるが、これこそがルーツであり文字通り「母なる存在」なのだと実感させられた瞬間は忘れようにも決して忘れられない記憶として墓場まで持っていく事になるのだろう。

70年代当時の家電メーカーによるオーディオブランド

三菱電機=ダイアトーン   松下電器=テクニクス

日立電器=ローディー    三洋電機=オットー

東芝電器=オーレックス   シャープ電機=オプトニカ

​ソニー、ヤマハ、パイオニア、トリオ、山水、コロムビア、赤井電機、     

ビクター、オンキョー、デノン、JVCケンウッド、ナカミチ、ラックスマン、

ティアック、アイワ、アキュフェーズ、

スプリング部品で作られた物理的エコー装置

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